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全て肯定する ― ご本人の気持ちを受け止めるということ ―

全て肯定する

― ご本人の気持ちを受け止めるということ ―

今回は、統合失調症の症状である「妄想」や「幻覚」と、ちるほーむで大切にしている支援について書きたいと思います。

統合失調症とは?

統合失調症とは、考えや気持ち、行動をうまくまとめることが難しくなる精神疾患です。

同じ統合失調症でも、症状の現れ方や困りごとは一人ひとり異なります。

「陽性症状」は、それまでなかったものが現れる症状です。妄想や幻覚、まとまりにくい会話などが挙げられます。

「陰性症状」は、それまであった意欲や感情の動きが弱くなる症状です。やる気が出ない、人との関わりが少なくなる、感情を表しにくくなるといった変化が見られます。

このほかにも、集中することや物事を整理することが難しくなる場合があります。

今回は、陽性症状の中でも、特に「妄想」と「幻覚」についてお話しします。

妄想とは?

妄想とは、周囲の人が事実とは違うと説明しても、ご本人にとっては本当に起きていることのように感じられる考えです。

「誰かに監視されている」

「周囲の人が自分の悪口を言っている」

「テレビやインターネットから、自分だけにメッセージが送られている」

これらは一例であり、症状の内容や程度は一人ひとり異なります。

周囲の人には、そのようなことは起きていないように見えても、ご本人は強い不安や恐怖を抱えていることがあります。

そのようなとき、「そんなことはありません」「考えすぎです」と強く否定しても、不安がなくなるとは限りません。かえって「誰にも分かってもらえない」と感じ、不安や孤独を深めてしまうことがあります。

幻覚とは?

幻覚とは、実際には外からの刺激がないにもかかわらず、声や音、姿、感触などを現実のものとして感じる症状です。

統合失調症では、実際には誰も話していないのに、声が聞こえる「幻聴」が現れることがあります。

自分を責める声が聞こえたり、誰かが自分について話しているように感じたりするなど、その内容は人によってさまざまです。

周囲の人には聞こえなくても、ご本人には実際の声と同じようにはっきり聞こえることがあり、そこで感じている怖さや苦しさは確かに存在します。

不安な気持ちに耳を傾ける支援者

ご本人の気持ちを受け止める

ちるほーむでは、ご本人の訴えを頭ごなしに否定せず、まず、その背景にある気持ちを受け止めることを大切にしています。

例えば、利用者様が「誰かに監視されている」と話されたとします。

そのときに「本当に監視されていますね」と話を合わせるわけではありません。反対に「そんなことは絶対にありません」と一方的に否定することもしません。

「誰かに監視されているように感じて、とても怖いのですね」

「それは不安になりますよね」

「安心して過ごすために、一緒に考えましょう」

起きていることの内容を事実として認めるのではなく、その人が感じている怖さや苦しさを受け止めます。

つまり、妄想や幻覚に同調するのではなく、ご本人の気持ちを肯定するということです。

安心できる方法を一緒に考える場面

一番苦しいのは誰でしょうか?

統合失調症の症状があると、周囲から理解されにくい言動や行動が現れることがあります。

では、このとき一番苦しいのは誰でしょうか?

それは、ご本人です。

自分にしか聞こえない声に責められているかもしれません。誰かに監視されているように感じ、毎日おびえているかもしれません。怖くて眠れない夜を過ごしているかもしれません。

だからこそ、まずは安心して話せる関係をつくることが大切です。

話を遮らない。

頭ごなしに否定しない。

訴えを軽く扱ったり、からかったりしない。

そして、どのような気持ちなのかを丁寧にお聞きする。

ちるほーむでは、このような関わりを基本姿勢としています。

何でも認めるわけではありません

「気持ちを肯定する」といっても、すべての行動を無条件に認めるという意味ではありません。

自分やほかの人を傷つけるおそれがあるときや、生活上の安全を保つことが難しいときには、気持ちを受け止めるだけで終わらせることはできません。

まずはご本人と対話し、その行動の背景を確認します。そして必要に応じて、ご家族、主治医、医療機関、関係機関と相談します。

医療と生活支援の両方が大切です

統合失調症の治療には、抗精神病薬を中心とした薬物療法や、心理社会的な支援などがあります。

医療による治療は、とても大切です。その一方で、毎日の暮らしを支えることも欠かせません。

安心して眠れること。

食事をきちんと取れること。

困ったときに相談できること。

話を否定せずに聞いてくれる人がいること。

このような日常生活の安心が、治療を続けていくための土台になると考えています。

ちるほーむが医療に代わることはできません。しかし、利用者様のそばで生活を支え、日々の小さな変化に気づき、必要な支援へつなぐことはできます。

生活支援と医療が連携する場面

否定せず、同調せず、気持ちに寄り添う

「全て肯定する」という言葉だけを見ると、妄想や幻覚の内容まで、すべて正しいと認めるように聞こえるかもしれません。

しかし、ちるほーむが肯定するのは、ご本人が感じている気持ちです。妄想や幻覚の内容を事実として認めるのではありません。

否定しない。

同調しない。

一人にしない。

そして、一緒に安心できる方法を考える。

ちるほーむでは、利用者様との信頼関係を大切にしながら、医療や関係機関と連携し、その方らしい暮らしを支えていきたいと思っています。