コラム

頑張れ!

「頑張れ!頑張れ!とにかく頑張れ!」

受験や就職、仕事、家事、趣味など、私たちの身の回りには、頑張らなければならないと感じる場面がたくさんあります。

もちろん、目標に向かって努力することは大切です。

しかし、頑張ることが当たり前になっている世の中だからこそ、時には「頑張りすぎないように気をつけること」も必要ではないでしょうか。

特に、双極性障害(躁うつ病)とともに生活している方にとって、心や身体の変化に気づき、無理をしすぎないことは、とても大切です。

躁うつ病(双極性障害)とは

躁うつ病は、現在では一般的に「双極性障害」と呼ばれています。

気分が大きく高まる「躁状態」や「軽躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返すことがある病気です。

躁状態と軽躁状態では、症状の強さや日常生活への影響の程度が異なります。

躁状態・軽躁状態

気分が高ぶり、普段よりも活動的になったり、話す量が増えたりします。

本人は「とても調子が良い」と感じていても、周囲から見ると、いつもとは様子が違うと感じられることがあります。また、気分が良くなるだけでなく、怒りっぽくなったり、イライラしやすくなったりする場合もあります。

うつ状態

気分が落ち込み、何をするにも意欲が湧かなかったり、これまで楽しめていたことを楽しめなくなったりします。疲れやすくなり、日常生活を送ること自体がつらく感じられる場合もあります。

今回は、このうち「躁状態」についてお話しします。

躁状態で見られること

躁状態では、次のような変化が見られることがあります。ただし、症状の現れ方や程度には個人差があり、すべての方に同じ変化が起こるわけではありません。

気分の変化が大きくなる

気分が高揚し、いつもより明るく活発になることがあります。一方で、極度に緊張したり、興奮したり、怒りっぽくなったりすることもあります。周囲の人から「いつもの様子と違う」「元気すぎるように感じる」「少し無理をしているように見える」と思われることがあります。

注意力が散漫になる

さまざまなことに意識が向き、ひとつのことに集中しにくくなる場合があります。考えが次々と浮かぶため、話題が頻繁に変わったり、自分でも考えを整理しにくくなったりすることがあります。

話す量が増える

いつもより話す量が多くなり、相手が話す間を待つことが難しくなる場合があります。話し続けたり、さまざまな人に積極的に話しかけたりすることもあります。

自信が大きくなる

「自分なら何でもできる」「絶対にうまくいく」という強い自信を持つことがあります。その気持ちが大きくなると、現実的には難しい計画でも、必ず実現できると思い込んでしまう場合があります。

眠らなくても平気だと感じる

睡眠時間が短くなっても疲れを感じず、夜遅くまで活動を続けることがあります。ほとんど眠らない状態が続いても、本人は「調子が良い」「まだ動ける」と感じていることがあります。

行動が活発になる

買い物や契約を次々としてしまうなど、お金の使い方が普段より大きくなることがあります。また、後から困る可能性があっても、その場の気持ちのまま行動してしまう場合があります。

アイデアが次々と浮かぶ

頭の中にさまざまなアイデアが浮かび、それらをすぐに実行しようとすることがあります。いくつものことを同時に始め、途中で収拾がつかなくなってしまう場合もあります。

本人が気づきにくいことがあります

躁状態になると、本人は「調子が良い」「元気になった」と感じていることがあります。そのため、自分が躁状態になっていることや、頑張りすぎていることに気づきにくい場合があります。

家族や周囲の人が心配して声をかけても、「自分は大丈夫」「何も問題はない」と感じ、言葉を受け入れることが難しくなることもあります。

周囲が強く注意したり、行動を無理に止めようとしたりすると、本人が責められたように感じ、怒ったり、悲しくなったりすることがあります。また、ご家族も、本人への対応や見守りが続くことで、精神的にも身体的にも疲れてしまう場合があります。

本人だけでなく、ご家族も無理をせず、必要に応じて医療機関や相談支援事業所などへ相談することが大切です。躁状態が強い場合や、睡眠がほとんど取れていない場合、金銭面や人間関係で大きな問題が生じそうな場合には、早めに主治医や医療機関へ相談しましょう。

スタッフがご本人の話を穏やかに聞く様子

心のブレーキをかけるために

気分が上がってきているように見えるときや、頑張りすぎているように感じるとき、ちるほーむのスタッフは次のようにお声をかけています。

・「最近、頑張りすぎていませんか?」

・「身体は疲れていませんか?」

・「何でも引き受けすぎていませんか?」

・「少し休む時間をつくってみませんか?」

・「以前、頑張りすぎてしんどくなったことはありませんでしたか?」

これは、本人のやる気を否定したり、挑戦を諦めてもらったりするためではありません。一度立ち止まり、自分の心と身体の状態を確かめ、自分に合ったペースを取り戻してもらうための声かけです。

ゴールまでの進み方は人それぞれです

人生をフルマラソンに例えてみましょう。マラソン選手は、42.195キロメートルという長い距離を驚くほどの速さで走ります。しかし、ちるほーむでは、速く走ることだけが正解だとは考えていません。

・5時間かけてゴールする

・一日かけて歩いてゴールする

・途中で何度も休みながら、一週間かけてゴールする

・自分に合った道具や周囲の助けを借りる

・しんどいときには、誰かに支えてもらう

どの方法も、その人に合っていれば大丈夫です。

大切なのは、ほかの人と速さを競うことではありません。自分の体調や気持ちを確かめながら、自分に合ったペースで進んでいくことです。

疲れたときには休む。ひとりでは難しいときには助けを求める。遠回りしても、立ち止まっても大丈夫です。休むことも、前へ進むために必要な時間なのです。

琵琶湖のほとりを自分のペースで散歩する様子

ちるほーむが大切にしていること

ちるほーむでは、利用者様一人ひとりの気持ちや体調に寄り添いながら、お声かけや支援を行っています。

・自分に合ったペースで活動する

・自分の気持ちや行動を整える

・少し離れたところから自分の状態を見つめる

・自分の心や身体の変化に気づく

・困ったときには周囲の人へ相談する

このようなことが少しずつできるよう、一緒に考えていきます。

「頑張りすぎないように気をつける」ということは、何もしないことでも、諦めることでもありません。自分の状態を知り、自分に合った活動を無理なく続け、それを生活の習慣にしていくということです。

そのために、私たち、ちるほーむのスタッフがお手伝いをさせていただきます。

「頑張って」という言葉

「明日はお休みですね。あと一日、一緒に頑張りましょうね!」

このような言葉をかけてもらうと、うれしく感じることがあります。誰かが自分の頑張りを見てくれている。自分はひとりではない。そのように感じられるからかもしれません。

ただし、「頑張って」という言葉が、いつでもすべての人の力になるとは限りません。その日の体調や気持ちによっては、負担に感じることもあります。

だからこそ、ちるほーむでは、ただ「頑張って」と伝えるのではなく、その方の状態に寄り添いながら、「十分頑張っていますよ」「今日は少し休みましょう」「一緒にゆっくり進みましょう」という言葉も大切にしています。

頑張れる日は、自分のペースで頑張る。しんどい日は、無理をせずに休む。そして、ひとりで難しいときには、誰かの力を借りる。それでいいのだと思います。

私たち、ちるほーむのスタッフは、利用者様の頑張りをそばで見守りながら、一人ひとりの歩幅に合わせて、一緒に進んでいきたいと考えています。

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